ストーカー被害、警察に相談した「その先」——避難費の助成、住所を守る手続き、スマホでのつきまといへの備え

男女・恋愛トラブル

こんなニュースがありました

東京都豊島区は2026年10月1日、ストーカー被害者が緊急にホテルなどへ避難するときの宿泊費を助成する制度を始めました。対象は区民とその同居の親族で、警察に相談したうえで、相手に書面による警告か禁止命令が出ていることが条件です。助成は1人あたり最大6泊、6万円までで、2027年1月からは引っ越しの費用の助成も始める予定とされています。区は、2026年3月に区内で起きたストーカーによる殺人事件を受けて、支援策を検討してきました。

ニュースの背景を解説

禁止命令を受けていた加害者による事件

報道によると、3月の事件の加害者は、2025年12月にストーカー規制法違反で逮捕され、2026年1月には禁止命令を受けていました。勧められた医療機関の受診も拒んでいたとされています。それでも、事件は防げませんでした。

国は2026年7月、ストーカー被害の拡大を防ぐための緊急対策をまとめました。禁止命令を受けたすべての加害者に警察が連絡すること、受診を働きかけることに加え、加害者にGPS端末を着けて被害者への接近を知らせる仕組みなども検討するとしています。

相談も禁止命令も、過去最多

警察庁によると、2025年のストーカー事案の相談は22,881件で、前年より16.9%増えました。相手で最も多いのは、元を含む交際相手で、38.9%を占めています。警察が出した禁止命令は3,037件と、過去最多になりました。

近年目立つのが、位置情報を使ったつきまといです。AirTagのような紛失防止タグを悪用したケースは679件と、GPS機器の511件を上回りました。2021年にはわずか3件でした。

支援を広げる自治体

避難の費用を支える動きは、ほかの自治体にも広がっています。東京都品川区は、ストーカーやDV、虐待の被害者の宿泊費を、1泊1万円まで最大21日助成しています。東京都は、犯罪の被害者が引っ越す費用を30万円まで助成する制度を設けています。

注意点・弁護士の見解

ストーカー被害を受けている方へ:警告・禁止命令が「支援の入口」になる

豊島区の制度がそうであるように、公的な支援の多くは、警察への相談や、警告・禁止命令が出ていることを条件にしています。警察に相談し、記録を残しておくことは、身を守るだけでなく、支援を受けるためにも大切です。

ストーカー規制法は、2025年12月の改正で、被害者からの申し出がなくても警察が警告できるようにしました。勤務先や学校にも、被害者を援助するよう努める義務ができています。禁止命令は1年間効力があり、延長することもできます。禁止命令に違反してつきまといを続ければ、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象になります。

禁止命令だけでは、守り切れないこともある

一方で、3月の事件が示すとおり、禁止命令が出ていても、それだけで身の安全が保証されるわけではありません。避難や住まいを移すことも含めて、命令と合わせて身を守る手段を考える必要があります。

住所を知られないための手続きとして、住民票の写しなどの交付を制限してもらう「支援措置」があります。住んでいる市区町村に申し出ると、加害者が住民票などから新しい住所を調べることを防げます。期間は1年で、延長もできます。過去には、役所の職員が被害者の住所を漏らしたとして、自治体に賠償が命じられた例もあります。引っ越しの際は、各種の手続きで住所が伝わらないよう注意してください。

スマホでのつきまといに備える

ストーカー規制法は、SNSのメッセージを繰り返し送ること、GPS機器や紛失防止タグで位置情報を取ること、それらの機器を持ち物や車に取り付けることも、規制の対象にしています。

  • 知らないタグに気づく:iPhoneやAndroidのスマートフォンには、持ち主の分からない紛失防止タグが一緒に移動していると知らせる機能があります。通知が来て身の危険を感じたら、すぐに警察に相談してください。スマートフォンの案内に従って電池を外すなどしてタグを止めることもできますが、タグは証拠になるので、捨てずに警察に渡してください
  • メッセージは消さない:しつこいメッセージや着信の記録は、画面を保存して残しておきます。ブロックする前に記録を取っておくと安心です
  • ネットに晒されたら削除を求める:住所や写真、事実でない噂などを投稿された場合は、SNSの運営者に削除を求めることができます。大規模なSNSは、削除の申出に一定の期間内に対応を判断して通知することが法律で義務づけられています

DV被害を受けている方へ:保護命令の対象が広がった

配偶者や、一緒に暮らしていた交際相手からの暴力には、DV防止法の保護命令が使えます。2024年4月の改正で、身体への暴力だけでなく、自由や名誉、財産に対する脅迫を受けた場合も対象になりました。接近を禁じる命令の期間は6か月から1年に延び、SNSでのしつこい送信や位置情報の取得も、禁止できる行為に加わりました。

相手との関係によって、ストーカー規制法の禁止命令と、DV防止法の保護命令のどちらが使えるかが変わります。迷ったら、まずは相談窓口に話してみてください。

相談窓口

  • 身の危険が迫っているとき:110番
  • 警察の相談窓口:#9110
  • 配偶者暴力相談支援センター:#8008(最寄りの窓口につながります)
  • DV相談+(プラス):電話は24時間、チャットや外国語でも相談できます
  • 法テラス:DVやストーカーの被害者は、資力にかかわらず弁護士の法律相談を受けられる制度があります

※資産が300万円以下の方は無料で相談ができますが、資産が300万円を超える方は所定の法律相談料がかかります。詳しくは法テラスウェブサイトをご確認ください。

ストーカー・DVの被害に、弁護士ができること

  • 保護命令の申立て:DVの被害について、裁判所への保護命令の申立てをお手伝いできます
  • ネットへの晒しへの対応:住所や写真などを晒す投稿について、削除の申出や投稿者の特定の手続きを進めることができます
  • 損害賠償の請求:つきまといによって受けた被害について、加害者への請求を検討します

ネット上の投稿の削除や投稿者の特定は、弊所が特に力を入れている分野です。ただし、身の危険を感じたときは、ためらわずに110番や警察の窓口に連絡してください。

まとめ

ストーカーやDVの被害は、一人で抱え込むほど危険が増します。警察への相談は、身を守る第一歩であると同時に、避難の費用の助成や住所を守る手続きなど、さまざまな支援につながる入口でもあります。

一方で、禁止命令が出ても安心はできません。避難、住所の秘匿、スマホやネットでのつきまといへの対策を組み合わせて、身を守ってください。ネット上の被害や法的な手続きでお困りの方は、アークレスト法律事務所にご相談ください。

※本コラムは2026年9月末時点の情報に基づいています。

監修者

山下 晃生 弁護士

第二東京弁護士会所属(登録番号:58233)

岡山県立岡山朝日高校卒業、中央大学卒業、明治大学法科大学院修了。

平成29年司法試験に合格、平成31年1月に弁護士登録し(71期)、神奈川県の法律事務所に入所。離婚問題を主に取り扱う。

令和2年3月に弁護士法人アークレスト法律事務所に入所し、その後ネットトラブル及びオフィスの原状回復請求減額交渉を中心に幅広く関わる。

ゲーム・アニメ・同人文化にも明るい。

タイトルとURLをコピーしました